2004年 56号 ココ・テイラーのレストランがカジノに開店

  「つい先日まで、今日のこの瞬間まで自分が生きていられるとは思えなかったわ。これを乗り越える事ができたのは、神の御加護だと確信しているの」
 昨年の大晦日、インディアナ州ゲイリー市にあるマジェスティック/トランプ・カジノにオープンしたばかりの『ココ・テイラ−ズ・ブルース・カフェ』で彼女は感慨深げにこうつぶやいた。ココが胃腸部の異常出血により2度の緊急手術を受けたのは、昨年11月2日のことだった。一時は医者も「最悪の場合はあと数時間の命です。至急御家族を呼んで下さい」と告げる程の危篤状態に陥り、その前後数日間というもの小生は電話のベルが鳴る度にドキっとしたものだ。峠を乗り越えた後も、生命維持装置にかかりモルヒネを打ちながら痛みとの戦いが続いた。ところが、奇跡的にもココの容態は向上しはじめ、大晦日の夜は店のオープニングに姿を現わすほどに回復したんだ。しかもバンドが1階のボール・ルームで演奏を始めると、娘のクッキーに車椅子を押されてステージ下まで来たココは、ゲスト・シンガーのジョン・キャストロからマイクを奪い取り『スイート・ホーム・シカゴ』を歌い始めた。いつもと変わらないパワー・ヴォイスがココの口から飛び出してきて驚いたのなんの。1か月前にはベッドの上で意識朦朧していたココは赤の他人だったのか?と疑った程だよ。改めて強運の星の下に生まれてきた人なんだなあ、と実感したのであった。
 
 それから数日後、この連載の取材を兼ねて再びココの店に出向いてみた。入り口を入ったところにあるショウ・ケースにはグラミーやWCハンディ賞のトロフィーなどがいくつも飾られ、壁には若かりし日のココの写真をはじめBBキングやマディ、ウィーリー・ディクソン、クラプトンら多くのミュージシャンやセレブリティ達とのツーショットが飾られていて、<ココ・テイラー博物館>といった趣でもある。ソファーやライティングはソフィスティケイトされた高級感があってクラブというよりは、品の良いレストランと言っていいだろう。メニューを見て笑みがもれた。

 マディ・ウォーターズ・フライド・オイスターズ、ハウリン・ウルフ・クラブ・ケークス、BBキング・カット、ビッグ・ママ・ソーントン・ポーク・チョップ、ベッシー・スミス・シュリンプ・カクテル、スイート・ホーム・シカゴ・リブズなんて見ているだけで楽しくなってきてしまうよ。
「このメニューの名前はココがずいぶんアイディアを出してくれました。内容もココの出身地であるメンフィス・バーベキュー、ステーキ料理を中心にソウル・フードやケイジャンがミックスされたユニークなものになっています」
 マネージメントを担当しているニック・ヘンリックス氏は、小生を案内しながらこう話してくれた。メイン・コースが$15〜30と一流レストランなみの値段。料理のクオリティはかなりの高さだとヘンリックス氏は自信満々だった。週末にはギターやキーボードのアコースティック・ブルース・ライブも行われていて、小生も近々プレーする予定だ。ココが完全復帰した後は、1階のボール・ルームで年に数回コンサートも行われる予定になっている。また、3月3日はシカゴ市長が設定したココ・テイラーの日。ココがこの店でサインと写真撮影会をすることになっているそうだ。ちなみにこの店の営業時間は水、木、日曜5pm〜 10pm、金、土曜は5pm〜11pm。
 
 ゲイリー市はシカゴのダウンタウンから車でおよそ40分。チャイナ・タウン・スクエアー(Archerストリート沿い)からは朝7時から翌朝5時まで2 時間おきに同カジノへの無料バスが出ているし、L(高架鉄道)のレッド・ラインの87th駅を降りたところにあるバス・ステーションからも同じく2時間おきにバスが出ているとのことだ。ココの店で夕食とライブを楽しみ、夜中までカジノでスロットやビンゴに講じる、というのもアメリカならではの遊び方だよね。シカゴに来たついでにちょっと遠出をしてみてはいかが?