2006年 67号 台湾ブルースシーン情報

 11月に入ったというのに、台湾の首都台北は日中は30度に迫る暑さ。前の週シカゴで4度の寒さの中でワールド・シリーズが行われていたのとはまるで別世界だ。夏を年に2回体験したような気分だね。アメリカ在住も19年になり、地続きのカナダやブルースが盛んなヨーロッパ各地へのツアーはけっこう行ったけれど、日本以外のアジアを訪れるのは今回が初めて。日本からは飛行機で3時間と近く、しかも世界一の親日国。そんな仲良しご近所国家、台湾のブルース事情を紹介してみよう。
 
 小生が今回出演したのは、Blues Bash2というブルース・フェスティヴァルで、台北のダウンタウンにある微風廣場にて行われた。ダグラス・ラピアー氏を中心とした台湾ブルース・ソサエティが主催したこのフェスティヴァルは、地元のバンドが6つ出た他、先日来日もしたアルゼンチンのアコースティック・ブルースマン、ガブリエル・グラッツァー、そして小生というラインナップだった。台湾のブルースといってもピンと来ない読者も多いと思う。ところが出演した6つのバンドはかなりレベルの高い音を出していたね。ハーモニカと歌のダグラスが中心となったBoPoMoFoは、リトル・ウォルターやサニー・ボーイらのシカゴ・ブルースのカバー・バンド。最近のシカゴでは逆に珍しい、日本でも受けそうなクラシック・ブルースをプレーする。また台湾の原住民(と本人は言っていた)スティーヴィーのバンド、Black Sheepは完全なスティーヴィー・レイ・ヴォーンのコピー・バンドだ。ギターのトーンからフレーズに至るまでかなり念を入れたコピーぶり。さらに、黒人女性タミカ・ジョンソンがリード・シンガーを努めるBoogie Chillin'はロック・ブルースとR&Bをブレンドしたアメリカン・テイストなバンドだし、David Chen&The Muddy Basin Rambersはドブロを駆使したスワンピーなブルースと、それぞれが個性的だ。これらのバンドのメンバーのほとんどはアメリカ出身で、何人かの日本人とごく少数の台湾人が混じっている、という感じだったね。小生はメイン・アクトとして出演させていただき、BoPoMoFoと共演。たった1度のリハーサルで、バッチリ決めてくれた腕の立つミュージシャンのみなさんに謝謝。
 
 Blues Bash2の翌日には、台北のトレンディーな西門地区にある楽器屋でギター・クリニックも行ったんだ。台湾の音楽雑誌”Guitar Fan”が主催したこのクリニックにはおよそ20人が集まってくれた。同誌編集者のティナさんは、「台湾でのブルースはまだ発展途上で、ジャズのほうがプレイヤーは多いですね。ギタリストもまずはジャズから練習を始める習慣があって、このギター・クリニックやフェスティヴァルでブルースが少しずつ広がっていくといいのですが」と言っていたね。
 
 気になる現地のクラブ・シーンはというと、台北市内では"Living Room”(http://www.livingroomtaipei.com/)、"Shannon"、"Riverside Music Cafe”(http://www.riverside.com.tw/)、車で2時間ほどの台中では”Grooveyard”や"89K"がブルース系のバンドを積極的にブッキングしている店。アメリカ人が経営している店も多く、そういった意味で今のところ台湾のブルース・シーンはアメリカからの移住組にリードされて少しずつ芽を出している、という感じなのだろう。東京から3時間と近いこともあるし、日本からもどんどんバンドが進出してもよいのではないかな。台湾ブルース・ソサエティは(http://www.geocities.com/bsot_taiwan/)、会長ダグラス氏のBoPoMoFo のウェブは(http://www.bopomofo-blues.com/)、日本のブルース・ミュージシャンのみなさんもこのへんからコンタクトをとってみてはいかがだろうか? アジアン・ブルースの未来に期待したい。ということで、みなさん良い年の瀬を!