1996年10月号 絶頂のレコーディング・レポート!(ココ・テイラー)

 ホームページを開いてからというもの(http://www.bluesox.com)、インターネットにすっかりハマっている小生である。先日のアトランタ・オリンピックもインタ─ネットの朝日新聞で日本人の活躍ぶりを知ったくらいなんだ。ブルースファンにはブルース・銀座(http://www.wellcomm.co.jp/~blues/)もお勧めだね。そしてオリンピックと前後して小生の新作“シカゴ・ミッドナイト"(11月21日キングレコ─ドより発売) のレコ─ディングがいよいよはじまったぜい。
 
 “うだる”という表現がぴったりな猛暑にみまわれた8月第1週に、アクメ・スタジオという今にも絶頂に達しそうな、まさに小生にうってつけのすごい名前のスタジオで、録音に臨んだんだ。今回は小生のギタ─とJ.Wウィリアムズのヴォ─カル、ベ─スを中心に、前作とほぼ同じメンバ─で、スペシャルゲストにブル─スの女王、ココ・テイラ─、ハ─モニカのビリ─・ブランチやサックスのエディ─・ショウにも参加してもらった。NHK大河ドラマにもひけをとらない豪華キャスト?だと自負してんだけどね。
 
 いよいよ初日、スタジオの名前にあやかってリスナ─が絶頂感を味わうほどのギタ─を弾くべ、と気合を入れてスタジオ入りしたのはよかったけど、ギタ─4本とツイン・リバ─ブにメサ・ブギ─を一人で搬入し終わる頃には汗だくで、次回はボ─ヤを呼ボウヤ、というくだらねえシャレが思いつくほど疲れたのは情けねえ。そういやあこの号が出るころにはいよいよ小生も30だ。最近、辛いものを食うと翌朝ツラいこともあるし、シカゴはもともと夕立ちは少ないほうだけど、小生の朝立ちもめっきり減ったような気がする。グスン。健康には気を付けるべ。と、思い切り脱線したな。で、今回は小生のオリジナル3曲とJ.Wの2曲を入れた計11曲のトラッキングを4日間でほとんど録り終えるというかなりスピ─ディ─なレコ─ディングだったね。某有名ロックバンドのように何ヵ月も(時には何年も?)かけてやるレコ─ディングとは全く大きな違いだ。なんてったって小生のリズムギタ─とホ─ンセクションをオ─バ─ダブした以外は全曲、“いっせ─のせ”でやっちゃう一発録りだったからね。やっぱりブル─スの命はその瞬間にしかない“生”な音をテ─プに残すこと、出来るかぎりオ─ バ─ダブは避けたいところだね。少々粗さがあっても質の高いライブ感にあふれた音を残すのがブル─スレコ─ディングの理想じゃないか、なんて小生は思っているんだけどね。今回のレコ─ディングでは、1970年のギブソン345をメインに使って、72年ストラトを4曲、ヴァ─ゴ・シュン・キクタ・モデルを主にリズムトラックで使ったんだ。アンプは、ブギ─とツインリバ─ブを曲によって使いわけて、リズムトラックは全部ツインリバ─ブだったね。エフェクタ─類はミックス・ダウンの時にリバ─ブを少々、リズムギタ─にはコ─ラス、リバ─ブをくどくない程度にかける予定だ。

 さて、トラッキングも順調に進んで最終日、スタジオには我々ミュ─ジシャン達のほかに、ココの参加に尽力してくれたアリゲ─タ─・レコ─ド社長のブル─ ス・イグロア氏やキングレコ─ドのチ─フ・ディレクタ─永田鹿悟氏、音楽評論家、DJとしても名高いマイク・越谷氏も日本からかけつけてくださった。いよいよココとのレコ─ディングだ。午後2時過ぎに娘と孫娘を連れてスタジオに現れたココは、スパンコ─ルをちりばめたドレスで身を包んだステ─ジでの派手なイメ─ジとは違い、地味な花柄模様のワンピ─ス姿だった。しかも右手にはケンタッキ─・フライドチキンのビニ─ル袋を下げていたから、サウスサイドにはどこにでもいそうな黒人のおばちゃん、という感じだ。あいさつや打合せ、簡単な音合わせをやって、いよいよ本番だ。「どの曲からいきますか?」と小生が聞くと、「ブル─スからやりたいわ」とココ。小生、意味がわからずにキョトンとしていると,「ほらブル─スよ、ブル─ス。スロ─なやつ」
 ここでやっとココのオリジナル「I`m gonna get lucky 」のことだとわかった。ココはスロ─ブル─ス全般をブル─スと呼ぶんだね。面白い発見だ。ココがレコ─ディング・ブ─スに入り、マイクを手にしたとたん、レコ─ドやライブで聞き馴れたパンチとディスト─ションが効いたあの野太い声がヘッドフォンを通してビンビンに伝わってきた。その瞬間、彼女は普通のおばさんから女王に豹変したのは言うまでもない。ほんと、ギタ─弾くのやめて彼女の歌に聞きほれていたいと思ったほどだよ。
 
 結局「I`m gonna get lucky 」と、ウィ─リ─・ディクソンでも知られる「Twenty nine ways」の2曲をそれぞれ2テイクずつ録り、どれも甲乙つけがたい質の高い演奏だったのは嬉しい悲鳴だね。トラッキングが終わってホッと一息ついているそばでココは、あの歌声とは裏腹なソフトな声で、「最近はずっと忙しかったわ。3週間ヨ─ロッパに行って、1日だけシカゴに帰ってすぐに2週間のウエスト・コ─ストのロ─ドでしょう。おととい帰ってきたばかりなのよ。車が私の家みたいなものね」 とクスっと笑った。その時ココは女王からすでに普通のおばさんに戻っていた。ミックス・ダウンもいよいよ来週からはじまる。トラッキングの時点でかなり密度の濃い内容になっていると思うので、皆の衆期待していてくだされ。
 
 さて、最後になるけど、小生9月中旬に10日間ほど新作のプロモ─ション帰国をすることになった。で、9月21日(土)に地元宇都宮のエスプリ(宇都宮市池上町2─2 ZOOM ビル2階、028(637)9191)にて石川二三夫、藤井康一、照本史、恵福浩司、佐野康夫という日本のブル─スシ─ンで大活躍する猛者諸氏とジャムセッションを繰り広げる事が決まったので、壮絶バトルの行方が気になるあなた、ぜひ聞きにきてちょうだい。炎あり、流血ありと超盛り上がること請け合いだ。と言うことで、See Yo!