2月号 ブルースの女王ココ・テイラーからのヘッド・ハンティング

 「ルークがバンドを離れることになったの。そこでショーン、あなたにレギュラー・メンバーとしてバンドに入ってほしいんだけれど、どうかしら」
 初雪も降り、本格的な寒さに突入する直前の11月下旬のこと、ブルースの女王、ココ・テイラーが小生に言った。ドスの利いた低い声で決断を迫るココは、「さ、吐いて楽になっちまいな」と容疑者を問いつめる<太陽に吠えろ>のヤマさんみたいに静かな迫力に満ちていたぜ。それにしてもココが自らバンドに誘ってくれるなんて、光栄なことこのうえないよな。感激のあまり「ココろ(心)して、その話し受けさせていただきやす」と、オヤジギャグを発するも、彼女には通じねえ。あ、あたりまえか。なにはともあれ、無事にバンドに入ることになり、翌日から彼女がシカゴのサウスサイドで経営するブルース・クラブ『セレブリティ』でリハをやり、いよいよツアーが始まった。そこで、恒例のツアー日記といこう。しかも今回からはスペシャル・ゲスト、ココ・テイラーの登場だぜ。ジャンジャジャーン。

 Day1 まだ日が明ける前の4時過ぎに『セレブリティ』に集合。ココの他、ドライバー兼ツアー・マネージャーのジュロームとバンド・メンバーを乗せたツアーバスは、ルート90をミネソタ方面に北上。車が発車して間もなく小生は深い眠りに落ちたようで、目が覚めたのはバスがミネソタのガソリン・スタンドに一時停止した時だった。あたりをきょろきょろ見渡すと、メンバーはみな寝静まっているので、ホッとする。小生のいびきでメンバーが不眠に陥り、最初のギグを前にして首になる、という世にも不名誉な失態は避けられたようだ。新入りは何かと気を使うのよ(ホンマかいな)。今夜演奏するミネアポリス市内のクラブ『カブーズ』でショウが始まったのは、11時を少し過ぎたころだ。いよいよココとのギグが始まる実感が湧いて来たぜ。アドレナリンが体中にあふれ出し、ついでに息子まで固くなってきやがった。最初に小生がジュニア・ウェルズの『Little by Little』を歌い、バンドリーダーのヴィノが1曲歌う。そして女王ココの登場だ。1曲目の『Can't let go』から店をうめつくした400人のファンがヒート・アップする。ココの曲は『I'm a woman』や、新作に入っているスロー・ブルース『Ernestine』のようなストレートなブルースもあるけれど、アレンジや仕掛けの凝った曲もけっこう多いんだよな。しかもココがその時の気分で進行を変えてしまうこともあって、彼女の一挙一動から目が離せない。アンコールの『Big boss man』も入れて、ステージは全13曲、2時間に渡った。ココとの記念すべきツアー初日は、大きな失敗もなく無事に終わり、楽屋からかっぱらってきたハイネケンと、ジャック・ダニエルでメンバーと乾杯だ。フと外を見ると雪が降り始めてきた。雪見酒の味は格別だな。

 Day 2 午前11時にロビー・コール。ココとメンバーを乗せたバスは、ルート35をさらに北上、ミネソタ州デュルースに向けて出発した。昨夜の雪見酒で深酔いした小生、完全な二日酔いだ。車内で頭痛と吐き気をこらえながら、横になる。2時間ほどでデュルースに到着。ゲロして首になるという不名誉な失態はなんとかまぬがれたようだ。今日の会場『ノーショアー・シアター』は1000人は入りそうな、ヨーロッパのオペラハウス調のコンサート・ホールだ。10時前にショウがスタート、昨夜と同じセット・リストで曲が進む。ココは汗をほとばしらせながら、ガンガン歌う。ジュロームがペーパータオルをココに手渡すために何度かステージに現れるほどの熱唱だ。ココの大ヒット曲『Wang dang doodle』ではほとんどの客が前の方に押し寄せてきたよ。1000人ものうねるような人の波を見るのは、ほんと、久しぶりだ。大盛況のうちにショウが終わり、楽屋入り口で金髪を肩まで伸ばした美女にサインを頼まれる。するとどうだ、サインも終わらぬうちに集合の合図が。アチャ〜。あわてて楽屋のハイネケンをバックに詰め込みバスに乗る。後ろ髪をひかれる思いでパツキンねえちゃんとお別れだぜ。くう〜。最近日本でも金髪好き男の犯罪が世を賑わせているが、柔道のヤワラちゃんでさえ、『最高で金髪、最低でも金髪』と言っていたもんな。日本人はやっぱ、パツキンが好きなのよ。
 
 と、いうことで金髪鑑賞ツアー、じゃなかった女王とのツアーも無事終わりシカゴに帰って来た小生。今後、ココとはアメリカ国内はもちろん、海外へのツ アーも入ることになりそうだ。さらにスケール・アップしてブルース情報をお届けするから、よろしく!!See y'all