2004年1月号 かなわぬ夢が実現!BBキングと共演 

 「ヘイ、エヴリワン。調子はどうだい?」リハーサルだというのにスーツにネクタイを締めたフォーマルなかっこうでBBキングが会場に姿を現わした。心臓がドキドキ音をたてて揺れていた小生は「ハロー、ミスター・キング」というのが精一杯だった。この日のギグは突然舞い込んで来たんだ。BBキングの話を聞きながら彼とブルースの歴史に触れる”An Evening with BBKing”というテレビ番組(PBS系)が企画され、そこで演奏するバンドのリーダとしてギターを弾いて欲しいと連絡があったのは本番の10日前のことだった。もちろんその場で快諾、以来小生の体内にはアドレナリンが溢れ興奮状態は当日まで続いたよ。なんてったって、BBキングは単なるブルースの王様ではなく、小生にとっては初めてブルースの素晴らしさを教えてくれた特別な人であり、シカゴでブルースをプレーするきっかけを与えてくれた恩人でもあるのだ。
 
 リハーサルは2時間ほどで終わり、しばらくの休憩を挟んで7時半にショウが始まった。小生は黒のスーツに黒のシルク・シャツという黒尽くめの出で立ちでステージに上がった。バンドが”The thrill is gone”でオープニング。”Why I sing the blues”、”made you move too soon”、”Everyday I have the blues”などのBBキング・ナンバーをインストで次々にやる。BBキングの曲をBB本人の前で演奏するという究極状態のせいか、指が自然とBBのフレーズを弾いてしまう。今日だけは次々に浮かんでくるBBメロディをそのまま弾いてしまう事を許してくれえ、の心境でプレーする。8時半に、ホスト役を努めるアイザック・ヘイズがステージに、さらにアイザックの紹介と共にBBがステージに姿を現わした。BBがアイザックと話している間に、小生はBBの愛器ルシールのチューニングだ。ギブソンES355を改造したルシールはFホールがなくてずっしり重い。弦高はかなり高めだ。BBは早いフレーズをほとんど弾くことはないし、ベンディングのやり易さやリッチなサスティンが生み出されるという利点を考えるとこのくらいの弦高がちょうどいいのだろう。

 さて、スクリーンには70年代初期のBBのステージが映し出された。歌っているのは”The thrill is gone”だ。「あなたの代表作とも言える曲ですが、ここに集まったみなさんもあなたのプレイを聞きたがっていると思いますが、いかがですか?」とアイザックが言うとたちまち会場は拍手と歓声で埋め尽くされた。「ウェル、OK」BBが椅子から立ち上がった瞬間に小生がルシールを持って行き、ストラップを肩にかける。すると、「ありがとう。これは君へのお土産だ」と言って、ピックをくれた。まるでお使いをして小遣いをもらった少年になった気分で苦笑い。ルシールのケーブルを小生のフェンダー・デヴィル・アンプに突っ込んで、小生と共有だ。

 BBのカウントと共に”The thrill is gone”が始まった。小生のすぐ後ろのアンプからCDやコンサートで聞き慣れた彼の甘い音色とブルージーなフレーズが飛び出してきた。それに小生はコードをつけ、リズムを刻む。17年間抱いて来た”かなわないかもしれない遠い夢”が今実現しているのである。一音一音をかみしめながら、BBの歌とギターに酔いしれる。まさに至福の瞬間であった。演奏が終わって、大きな拍手を受ける中「サンキュー。とても素晴らしいバンドに拍手を送ってください」と我々の労をねぎらったあとで、「その若いギタリストはまるでBBキングだ。もし僕が自伝映画を作る時には君に若いBBキングを演じてほしいな」と小生に向かってこう言ってくれた。ルックスも肌の色も違う小生がBBキングを演じるなんて少し滑稽な気もしたけれど、BB本人からこんな賛辞の言葉をいただいて、光栄な気持ちでいっぱいになったね。ほどなく3時間あまりのショウは終わり、BBはスタンディング・オベーションの中楽屋へと姿を消した。
 
 ショウの後のレセプション・ルームはBBとの記念撮影やサインを求める多くの人でゴった返していた。後ろのほうにいた小生を見つけた彼は、「カモン」と言って小生を右隣に呼び、周りに集まった人たちの質問や世間話しに耳を傾けながらも小生の手をジッと握っている。「どこにも行くなよ、次は君と話すからな」という無言のメッセージが心に届き暖かい気持ちになった。数分後にやっとBBが小生に向かって話しはじめた。「君はBBキングをよく知っているね。とてもいいギタープレイヤーだ。Light(肌の色の薄い)BBキングだね」と言って笑い声を上げた。小生は彼の大きな手の暖かみを感じながら音楽人生で最高の瞬間を過ごしていたのである。